転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 どこかの国の王族がやってくるようなことがあれば、歓待する側として王宮に呼び出されるはずである。
 それに、ルジェクもいつも通り、父の代理としての仕事にいそしんでいた。となれば、皆がそろってたまたま休暇を取っているとかそんな感じだろうか。

(それにしても、ちょっと不自然な気もするけど……)

 いつもはたくさんの人の気配のある建物の中が、しんと静まり帰っているのは不思議な気分だ。

「昨日の祭りで皆二日酔いってわけでもないよなぁ」

 昨日のことを思い出し、ぽんと顔が赤くなる。幸いにも隣にいる兄は、それに気づかなかったようだった。
 エドアルトと過ごした時間はさほど長くはなかったけれど、楽しかった。生まれて初めての贈り物は、今もアイリーシャの左手首で揺れている。
 右手で左手首に触れそうになり、慌てて意識を戻した。

「皆が皆二日酔いになるの? そんなにお酒ばっかり出るようなお祭りではないでしょうに」

 ノルヴェルトが、顎に手をあてて思案の表情になった時だった。アイリーシャは、前方から歩いてくるエドアルトに気づいて足を止める。
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