転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 そして、今、ヴァレリア最大のライバルと言えば、同じ公爵家の娘であるアイリーシャになるのは間違いない。
 そう言った目でヴァレリアを見るから、ヴァレリアに対しては、「面倒な相手」としか思えないのだ。

「じゃあ、俺の部屋で話をしましょう。リーシャ、お前もこっちに来い。急ぎのものはないからいいだろ?」
「それは、かまわないけど……」

 研究所内にある兄の部屋は、いつ来ても綺麗に片付けられている。
 ソファにノルヴェルトとアイリーシャが並んで座り、エドアルトは向かい合う場所に座った。

「時間がもったいないから、さっさと話をさせてもらうぞ。俺がアイリーシャ嬢に頼みたいのは、今、首都で流行中の謎の病についての調査だ」
「妹は医師ではないですよ」
「おそらく――だが、病ではなく呪いの類だろう、と先ほどミカルから報告があった」

 呪いという言葉に、アイリーシャは肩を跳ね上げた。

(そうよ、どうして今まで気づかなかったんだろう……)

 意識を失い、昏睡状態が続く。回復魔術をかけても戻らない。
 となれば、誰かが人為的に引き起こしている可能性の方が高いではないか。

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