転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「んでも、それなら神殿の方が早く気付くんじゃないですか? 呪いの解除とかって、あっちが専門でしょうに」

 ノルヴェルトの言うことも当然だった。
 神殿には、属性によって、どのように回復するかは異なるけれど、回復魔術を得意とする者が多く集まる。
 たとえば、水属性ならば傷口に魔力で作った水をかけるし、土属性ならば、薬草から作った薬に、回復魔術の効果を追加したものを飲ませる。
 その中には、呪いの解除もあるはずだ。残念ながら、アイリーシャは呪いの解除には詳しくないため、手を貸すことはできないけれど。

「――今の世に伝わる魔術では、どうにもならなかった」

 そう告げるエドアルトの声は重苦しい。

(今の世に伝わる魔術ではどうにもならないって……そんなのって……)

 この魔術研究所には、古の時代からの書物が残されている。

「もちろん、神殿にもかけあってみたんだ。昔の記録を見ることはできないかと。呪いならば、神殿が本領を発揮するはずだからな」
「殿下の依頼でも動きませんか。あいつら……本当にしかたないな」

 大げさに両手を広げて、ノルヴェルトは天井を仰いだ。

「しかたないって?」
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