転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「ミカルにも協力を依頼してある。王立研究所の書物だけではなく、俺の方でも伝手を使って使えそうなものを集めてくるから、アイリーシャにはそちらを見てもらいたい」
「……わかりました」

 これは、責任重大だ。背筋が伸びるような思いで、エドアルトの依頼を引き受けることにした。

「――ん?」

 エドアルトが、何事かに気付いたかのように窓の外に目をやった。

「どうしたんです?」
「声がする」

 いきなり立ち上がったかと思ったら、窓を大きく開け放った。耳をすませているようだ。
 それからぐるりとこちらに向きを変え、アイリーシャに問いかける。

「今日は、ルルはどうした?」
「ここには連れてこられないので、家で留守番を。ルジェクお兄様が、相手をしてくれているはずですが……」

 最初はアイリーシャの部屋から出さないようにしていたのだが、鍵をかけても逃げ出してしまうのは、寂しいからではないだろうか。
 そんな結論に至ったため、ルルは公爵邸では、邸内を自由に行き来することができるように、閉じ込めるのはやめた。
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