転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 ミカルもまた、アイリーシャを信じてくれている。首都に戻ってもよいと許可を出したのはミカル自身なのだから。

「問題は、あなたの立場でしょう」
「それもわかっているんです」

 公爵家の娘にして、天才とは呼べないにしても秀才と呼ばれる程度には魔術を使うことができる。容姿だってそこそこ――いや、控えめに言ってかなり優れた容姿の持ち主なのはわかっている。
 十五にして宮廷魔術師になったミカル自身から直々に教えを受けたというのも、妬みの対象になるだろう。

(ミカル先生に教わっておいて、この程度にしか育たなかったのか――そう言われているのだって知っている)

 三人の兄達も、国王や王太子に重用され、特に次兄のノルヴェルトは親友と言ってもいいほど親しくしている。
 なんだって、足を引っ張る理由さえあればいいのだ。
 アイリーシャを、今の立ち位置から引き落とすことさえできれば。

「それだけではないでしょう?」

 それでも、ミカルはとめようとしなかった。聞きたくないと、心の奥の方から声がする。
 それでも、師の言葉を中断することなどできるはずもなく、ミカルの言葉に耳を傾けるしかなかった。

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