転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「……それじゃあ、教会の協力を仰ぐしかないってこと?」

 首都の教会は王家に非協力的であるけれど、地方の教会は協力的なこともある。首都の教会が非協力的な分、エドアルトは地方の教会から書物を集めてくれた。
 だが、それでは足りないと兄は言う。

「……ねえ、お兄様」

 こうなったら、アイリーシャが教会にこっそり乗り込むというのはどうだろうか。アイリーシャならば、教会の内部を誰にも見つからずに動き回ることができるだろう。

「そんな危険なこと、お前にやらせられるはずないだろ?」
「でも!」

 兄はそう言うけれど、このまま黙って見ていることなんてできない。自分には、それを乗り越えるための手段があるのだからなおさら。

「……それは、俺も賛成できないな」
「エドアルト様?」

 書庫には、兄とアイリーシャしかいなかったはずなのに、どこから入ってきたというのだろう。目を瞬かせているアイリーシャに向かい、エドアルトは言った。

「君一人に、危ない真似はさせられない。行くなら、俺も一緒だ――だけど、こっそり入るなんて真似はしなくていいぞ? 少々、手荒になるが」

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