転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 手荒? 手洗って、いったいどのレベル?

 アイリーシャが疑問に思っているうちに、てきぱきと教会に向かう準備が整えられてしまった。

「ど、どうやるつもりなんですか……?」

 エドアルトと一緒に馬車に詰め込まれ、アイリーシャは困惑した。
 ノルベルトは書庫での調査を続け、ルルも書庫で留守番だ。

「あの、私じゃなくて、兄の方がよかったんじゃ」
「いざとなったら、君にこっそり立ち回ってもらう必要がある。その時には、『先に帰ってくれ』と言うから」
「わかりました……」

 たしかに、入り口から人目につかないようにして教会に入るより、中に入ってから姿をくらます方が楽だ。
 エドアルトはそこまで考えてくれていたらしい。

(……私が、こんなんじゃなかったらよかったのに)

 アイリーシャのせいで、エドアルトにも迷惑をかけてしまっている。

「私のせいですみません……」
「君は悪くない。君の周囲に、よくない噂があるのも事実だが、それは君のせいじゃない」

 どうして、エドアルトはこんな風にアイリーシャのことを信じてくれるのだろう。

「殿下は、私が怖くないんですか……?」
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