転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「私じゃダメ? ダメなの?」
「ほら! ルルが気落ちしてる!」
「ヴィクトル、何があった? アイリーシャ、問題発生か? 困ったことがあるなら――」

 ヴィクトルとアイリーシャががんがんやり合っているのを聞きつけたのか、エドアルトまで駆けつけて来てしまった。

(なんでこうなるのよ……!)

 兄達にとってのアイリーシャは、いまだに守らなければならない存在なのだろう。可愛い末っ子なのに、長い間離れて暮らさないといけなかった。

「――リーシャだってそうだろ? どこに行っても人に囲まれて疲れたんだろう。そういう顔をしている」
「姿を隠しているから、捕まることはないから大丈夫よ、お兄様」

 そういう意味では、前世よりはるかにましだ。前世では、一度囲まれてしまったら、逃げ出すことなどできなかったのだから。

「それにしたって、ここまで徒歩で来るとか危ないだろ?」

 年が一番近い分、ヴィクトルは兄達の中でも一番過保護だ。気を失って運び込まれた十年前の記憶が、トラウマになっているらしい。
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