転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 客室ではなく、王族の住まう区域に部屋を与えられて、居心地悪い。

(たしかに、その方が警護が楽と言えば楽なんだろうけど……)

 アイリーシャのために、来客用の区域に警護を派遣するより、王族と一緒に護衛する方が騎士団の負担が少ないのもわかる。
 でも、落ち着かないものは落ち着かない――。

「しばらくの辛抱だ。ここにいるのは嫌だろうが」
「いえ、嫌ってわけじゃないんですよ。それに、下手に外に出るより、人目につかないですむと思うんですよね……」

 なにせ、アイリーシャの勤務先は、王宮と同じ敷地の中にあるのである。家から通うより、人目につかないと言えばつかないのだ。

「そのことなんだが、しばらく、魔術研究所への出勤も取りやめてほしい」
「え?」

 あまりのことに、声が裏返る。

(私、役立たずみたい……)

 あそこにいれば、何もできない自分ではないと思うことができた。けれど、それは余計なことだっただろうか。
 アイリーシャの気持ちは、エドアルトには実によく伝わっているらしい。彼は、アイリーシャの方に身をかがめた。

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