転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 ミカルは優れた魔術師だ。彼の持つ知識と技量に誰もかなわない。たしかに魔力の量は少ないが、彼なら誰にも負けることはない。

「私のこと信じてないの?」

 ルルが泣きそうな顔になる。

(泣きたいのはこっちなんですけど……!)

 今回、ミカルの力をおおいに借りるつもりでいた。それなのに、ルルがミカルを拒むようでは、うまくいくはずもない。

「ルルを信じてないってわけじゃないわ。だけど、私も先生を信じているの」

 ミカルは、アイリーシャに辛抱強く指導してくれた。魔力の量が多いわりに、どの魔術も上級までおさめることができなかったアイリーシャを見放すことなく。
 それを思えば、簡単にルルの言葉に同意することはできなかった。

「いいわ。まず、私が呼ばれたのは――私と契約して、魔力を底上げしようとした者の仕業。でも、契約はうまくいかなかった」

 それは、あの時、神も言っていた。
 資格のない者が、強引に聖獣と契約を結ぼうとして失敗したから、聖獣が半端な状態で呼び出されてしまった。その結果、ルルは街をさ迷う羽目になったのだ、と。

「……ねぇ、神様って今何をしているの?」

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