転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 あとのことはまかせると言ったきり、神様はふらりと消えてしまった。今、彼は何をしているのだろう。

「たぶん、魔神を封じるための武器を取りに行ってるんだと思う。呪いには、魔神の気配を感じたから」
「……魔神、かぁ……」

 ぱたりとアイリーシャはテーブルに倒れこんだ。
 考えないようにはしていたのだ。魔神が、こちらの世界に来る可能性を。

「あー、ひとつ聞いていいか? 魔神というのは?」
「は? エドアルト様? な、なんでここに……!」

 いつの間にか、エドアルトが部屋の中に入り込んできている。扉を開く前に、ノックくらいしてくれればいいのに。
 その不満が、思いきり顔に出ていたようだった。

「ノックしたし、声もかけた。返事がないから、中で何かあったのかと」
「……いえ、すみません……」

 なんでルルはあんなにミカルを嫌うのだろうと考えすぎていて、ノックの音を聞き洩らしたらしい。

(というか、ルルは聞こえていたと思うんだけど!)

 教えてくれればいいのにとルルの方を振り返ったら、ぷいと顔を背けられた。どうやら、わかってやっているらしい。

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