転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「この世界を、滅ぼそうとしているやつ。私達とは別の世界にいてね、この世界に時々やってくるのよ――たぶん、人間の世界では災厄とか災いとか言われてるんじゃないかしら」

 エドアルトは険しい表情になった。

「魔神は、創世神と対立する立場にあるんです。そして、この世界を滅ぼそうとしている――そうよね、ルル」
「なぜ、わかる?」

 ぐっとこちらを見られて、アイリーシャは言葉を失う。
 膝の上に置いた手をぐっと握りしめた。

(これを口にしてしまったら……きっと、彼との関係は変わってしまう)

 気がついたら、いつもエドアルトはアイリーシャを支えてくれていた。

「それは、私が魔神を封じるための力を与えられているからです――そのために、この世界に生まれたと言っても過言ではないでしょう」

 以前なら、もっと軽く考えていた。
 三百年後の世界で遠くから見守りたい人がいる。
 ――けれど。
 今はそれだけじゃない。

「……それでは、君は」
「やれるところまで、やってみます。私の大切な人を守るために」

 愛してくれる家族。優しい友情を築いてきた友人達。
< 262 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop