転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 三百年後のためじゃない。今は、今、この時を守りたいと思っている。

「魔神を倒すためには、特別な武器が必要です。神様は……それを取りに行ってるんだと思うんですけど」

 最終決戦の直前、ゲームヒロイン"モニカ"は、聖槍を与えられる。それを持って、魔神を倒すのだ。
 それが、ゲームではクライマックスだった。
 魔神を倒した後、ヒロインと攻略者達の未来を表示してゲームはエンディングへと向かう。
 時には、共に旅だったり、時には幸せな家庭を築いたり。
 ヒロインに対して、優しい友情しか見せないケースもあるし、"聖女"に自分はふさわしくないと相手が身を引くケースもあった。

「その武器が手に入ったら?」
「――行きます。この世界を、守りたいと思うから」

 それは、アイリーシャの決意表明だった。

「あー、よかった」

 不意に気の抜けるような声が天井から降って来た。

「はい?」

 声の方を見上げれば、ふよふよと白い猫が浮かんでいる。

「間に合ったよ、アイリーシャ。君が、そう思ってくれないとだめだったんだよねぇ……」

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