転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
重い扉を開くと、二列に並んだ長いベンチ。左手の上部にあるのは、王族が祈りに参加する時の特別席だ。
真ん中にある通路の先には、真っ白な大理石で作られた創世神の姿とされる像。
アイリーシャの知る猫の姿とは似ても似つかない、若い男性の姿だ。
「神様、聖槍ってどこにあるの」
「あの像のところ。やー、上手に隠したもんだよねぇ……我の知らない間に、人間もだいぶ進歩してたみたい」
神様と言えど、知らないことは山のようにあるらしい。アイリーシャは、像の方に踏み出した。
共にここまで来たエドアルトは、邪魔をしないように一歩引いたところからこちらを見ている。
――こんな状況なのに。
恐ろしいほどにアイリーシャの気持ちは凪いでいた。
「じゃあ、行っとく?」
ルルが、アイリーシャを見て微笑む。ルルの手に背中を置き、アイリーシャはゆっくりと像の前に進み出る。
像の前で足を止め、上を見上げた。こちらを見下ろす、優し気な青年の微笑み。
(私、この光景を知っている……!)
これは、ゲームの終盤。モニカが最終決戦に向かう前、聖槍を授かったのと同じ場所だ。
――同じ場所にいる。
真ん中にある通路の先には、真っ白な大理石で作られた創世神の姿とされる像。
アイリーシャの知る猫の姿とは似ても似つかない、若い男性の姿だ。
「神様、聖槍ってどこにあるの」
「あの像のところ。やー、上手に隠したもんだよねぇ……我の知らない間に、人間もだいぶ進歩してたみたい」
神様と言えど、知らないことは山のようにあるらしい。アイリーシャは、像の方に踏み出した。
共にここまで来たエドアルトは、邪魔をしないように一歩引いたところからこちらを見ている。
――こんな状況なのに。
恐ろしいほどにアイリーシャの気持ちは凪いでいた。
「じゃあ、行っとく?」
ルルが、アイリーシャを見て微笑む。ルルの手に背中を置き、アイリーシャはゆっくりと像の前に進み出る。
像の前で足を止め、上を見上げた。こちらを見下ろす、優し気な青年の微笑み。
(私、この光景を知っている……!)
これは、ゲームの終盤。モニカが最終決戦に向かう前、聖槍を授かったのと同じ場所だ。
――同じ場所にいる。