転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「もらっていくって……」
「性根を叩きなおさねばならん。まあ、こちらの世界にいつ戻ってこられるかはわからんけど。戻って来た時、こいつがどうなっているかは、我の関与するところじゃないから知らん」

 知らんってそんな無責任な。なんで、こんなにお気楽なんだろう。
 もうどこから突っ込んでいいのかもわからない。

「ミカル先生を連れて行って、どうするつもりなんですか?」

 乾いた笑いを漏らすことしかできない。
 ほんの数分前まで命を懸けたやり取りをしていたはずなのに、どうしてこうしまらないんだろう。
 意識を失っているミカルの身体を器用に背中に乗せ、神はこちらを振り返る。

「ほら、三百年後。導き手が一人じゃ足りないかもしれないじゃん? まあ、その時、こいつが協力してくれるかどうかはわからないけど。使える駒は多い方がいいっていうか。まぁ、我が働きたくないってだけなんだけど」
「ちょっと神様正直すぎません?」

 これで師匠とお別れだと思うと、胸に迫るものがあったはずなのに、神様のせいでしんみりした空気がぶち壊しだ。
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