転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「私、お友達いなかったから、嬉しい。よろしくね」
「私とダリアはずっとお友達なの。アイリーシャ様は、新しいお友達ね」
「あら、だめよ」

 ミリアムに向かって、アイリーシャは指を振った。

「お友達なんだもの、"アイリーシャ"って呼んでもらわないと」

 たぶん、二人ともアイリーシャには敬称をつけて呼ぶように親から言われていたのだろう。けれど、そんなの関係ない。
 だって、友達なのだから。

(それに、お友達を作りなさいってお父様もお母様も言ってたし)

 ミリアムとダリアなら仲良くしていけそうだ。
 両親の言いつけを守ることができそうでほっとした。
 当面、五歳児として振る舞わなければならないのだけは慣れそうにないけれど、ダリアをお手本にしたらうまくいくような気がしてくる。

(あれ、あっちざわざわしてない……?)

 ほっとしたのもつかの間、庭園内がざわざわし始めたのに、アイリーシャも気づいた。どうして、こんなにざわざわしているのだろう。

「……アイリーシャ・シュタッドミュラー嬢」

 こちらに歩いてくる少年は、いったい誰だろうか。
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