転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「じゃあね、ばあや。あっちで遊んでくる!」
「いらっしゃるのならいいんですよ。お庭から外には出ないようにしてくださいね。ばあやが見ていますよ」
「はぁい」

 乳母はこの屋敷ではけっこうな権力の持ち主だ。なにしろ、乳母になる前は、母が嫁いできた時に生家からつけられた侍女だったらしい。
 庭から出なければいい。となれば、庭で遊び相手を探すしかないか。

「兄様! かくれんぼしましょ!」

 歩いて行った先に、三兄のヴィクトルがいるのに気づいて、声をかけた。

「かくれんぼ? リーシャが隠れるんだろ?」
「そうよ!」

 アイリーシャは胸を張った。隠密スキルの練習なのだから、アイリーシャが隠れなくてどうする。

「やだよ、リーシャを探すだけじゃつまらない」
「じゃあ、兄様が先に隠れていい。私、絶対に見つけるから」

 アイリーシャは、ヴィクトルを押しやった。
 三人の兄は皆アイリーンを可愛がってくれるのだが、ヴィクトルは一番年が近いせいか、アイリーンの頼みを聞いてくれないことも多い。

(ここは、私が大人になって譲らないとね!)

 内心で胸を張っているが、これでも十八である。

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