転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
とりあえず公爵家の娘としての義務と、いずれ回ってくるであろう聖女としての義務さえ果たせばあとは自由。
ひそやかに歩き回っていたから気がつかなかった。アイリーシャの存在を察知した人間がいるということに。
不意に背後から首に腕を回され、身体が凍り付く。背後から人が近づく気配は、まったく感じていなかった。
「なっ……な……」
あまりのことに声が出ない。そのままぐっと後ろに倒され、気がついた時には冷たい地面が背中に触れていた。
両腕は、アイリーシャを押し倒した人間の膝に押さえつけられていて、身動きひとつできない。
恐怖のあまり、目はぎゅっと閉じたままだった。首に刃の感触が触れ、ちりっとした痛みが首に走る。
「こんなところで"隠密"を使うとは怪しいやつ。どこの間者だ?」
耳を打つのは、低い声。
その声には聞き覚えがある。
(……王太子殿下?)
――けれど、なぜ。
今日の主役である王太子がここにいるのだろう。
「――姿を見せろ」
ひそやかに歩き回っていたから気がつかなかった。アイリーシャの存在を察知した人間がいるということに。
不意に背後から首に腕を回され、身体が凍り付く。背後から人が近づく気配は、まったく感じていなかった。
「なっ……な……」
あまりのことに声が出ない。そのままぐっと後ろに倒され、気がついた時には冷たい地面が背中に触れていた。
両腕は、アイリーシャを押し倒した人間の膝に押さえつけられていて、身動きひとつできない。
恐怖のあまり、目はぎゅっと閉じたままだった。首に刃の感触が触れ、ちりっとした痛みが首に走る。
「こんなところで"隠密"を使うとは怪しいやつ。どこの間者だ?」
耳を打つのは、低い声。
その声には聞き覚えがある。
(……王太子殿下?)
――けれど、なぜ。
今日の主役である王太子がここにいるのだろう。
「――姿を見せろ」