転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 国王の顔を凝視したまま、母のスカートの陰に隠れる。これが国王の威圧感というものか。

「やはり、子供には怖がられるか……」

 アイリーシャの無礼をとがめることなく笑ってすませると、国王は真面目な顔になった。

「そなた、魔術の才能があるそうだな」
「わかんない」

 ここでは、こう返すのが正解だろう。だいたい、五歳の幼児に魔術の才能があるかないかなんてわかるはずないではないか。
むっとして答えると、アイリーシャの答えが面白かったらしく、国王は小さく笑った。

「そうか、わからないか。まあ、そうだろうな。ミカルがこんなのは見たことないと言っていた。公爵、そなたの娘は、ミカルを越える天才のようだぞ」
「リーシャ、わかんないもん」

 再びぷいと横を向く。ここはもうわからないで通してしまおう。半分ヤケだが、大人達には気づかれまい。
 そんなアイリーシャに微笑ましそうな目を向けて、国王は父と話を始めていた。

「そなた、魔術の勉強を始めさせていたのか?」
「とんでもない。まだ先だと思っていましたよ。宮廷魔術師のミカル殿が、魔術の才能があるとは言っていましたが」
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