転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「まあ、そういうことになるな。少なくとも、魔力の制御ができないようでは困ることも多いだろう――ある日突然、屋敷の屋根が吹き飛んでいたということにもなりかねない」

 暴発ではないので、その心配はないのだが、アイリーシャはおとなしく母のスカートの陰に隠れておくことにした。

「そなたには、悪いようにはしない。だが、そなたの才能は、慎重に伸ばさねばならぬ。宮廷魔術師のミカルに、そなたを指導させよう」
「……え?」

 まだ、スカートの陰から、アイリーシャは国王を見た。たぶん、国王は笑顔を作っているのだろうが、髭の陰に隠れていてよくわからない。

「そなたには、魔術の才能がある。だが、その制御の方法を学ばなければ、また暴発させてしまうかもしれないだろう。その時、周囲に被害が出るかもしれない」

 アイリーシャはうなずいた。実際には厳密に制御した上で放った魔術であるけれど、周囲に暴発として認識されている以上、それで押し通した方がいい。
 王の話はそれだけではなかった。父に向き直って続ける。

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