転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「それと、アイリーシャはしばらく領地に戻った方がいい。首都で魔力を爆発させるかもしれない危険もそうだが、アイリーシャの才能に気付いた貴族どもが、抱き込みにかかろうとしているからな」
「ですが、陛下。私は、娘と離れて過ごすのは耐えられませんよ! 私も、領地に戻らせていただきます」

 ――それでいいのか、父。一応、国の重要人物であるはずなのだが。
 国王は渋い、それはもう渋い顔になったけれど、唸った末にこんな提案をしてきた。

「週に三日こちらで過ごし、残りは領地で過ごすようにすれば問題ないだろう。ミカルもそなたが領地にいる間は、公爵家に滞在し、アイリーシャに指導するということでどうだ」
「それでしたら、喜んで」

 こうして、アイリーシャは両親とともに領地に戻ることになった。三日に一度、宮廷魔術師が指導に来てくれるという破格の待遇である。
それは、目立たなくなるのがいよいよ難しくなってきた――ということでもあったけれど、今はそれを気にしている場合ではなかった。
 
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