転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「炎の矢よ、射抜け! 水の槍よ、貫き通せ! 風の刃よ、切り裂け! 土の拳よ、押しつぶせ!」

 四大属性の魔術を次から次へと放つ。アイリーシャの魔術は正確だった。口早に紡がれた魔術は、左から順に的を射抜く。
だが、いずれの的も壁に固定されたまま。もっと勢いのある魔術師なら、的そのものを破壊できるともいう。

「やはり、正確。そして発動までが速い。そこが、アイリーシャ様のよいところでしょうね。それに魔力の量が多い」
「……はい」

 アイリーシャの長所は、魔力が多いことと、正確に魔術を発動できることだ。そして、発動までの時間も短い。

「先生、お手本を見せていただけませんか?」
「かまいませんよ」

 アイリーシャの頼みに応じ、ミカルは的を見据えた。彼は何も口にしない。
だが、次から次へと的に魔術が炸裂する。的が破壊されなかったのは、彼が威力を抑えているからだ。

「すごい」

 アイリーシャの口から、素直に感嘆の言葉が漏れた。さすが、十五の年には、宮中魔術師として王宮に務めていただけのことはある。
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