転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
石を背中に背負って十キロ走らされたりとか、水の中に潜って一時間耐える――呼吸は魔術で制御する――とか、本当に本当に大変だった。
ミカルの前では、そんな過酷なことをしているなんて見せなかったけれど、ここまで来たのには、『人目につきたくない』というアイリーシャの願いがあったからである。
「王宮においでになっても、魔術を暴走させることもないでしょう――陛下も、アイリーシャ様の成長をお喜びですよ」
「ありがとうございます、先生」
王宮に戻るのは残念だけれど、もう、完璧に身をひそめることができる。社交上の付き合いは最低限にし、地味に立たず過ごすことにしよう。
首都の屋敷に戻るのは十年ぶりだった。
(あいかわらず、ここは賑やかねぇ……)
転移術が使えるのは、ごく一部の魔術師だけだ。
そんなわけで、アイリーシャ達は馬車に大量の荷物を詰め込み、都まで十日ほどの旅をしてようやく戻って来た。
街は、十年前と変わりないように見えていた。いや、十年前より栄えているだろうか。最後にこの場所を見た時は五歳だったから、記憶があやふやだ。
(……そう言えばあの時)
ミカルの前では、そんな過酷なことをしているなんて見せなかったけれど、ここまで来たのには、『人目につきたくない』というアイリーシャの願いがあったからである。
「王宮においでになっても、魔術を暴走させることもないでしょう――陛下も、アイリーシャ様の成長をお喜びですよ」
「ありがとうございます、先生」
王宮に戻るのは残念だけれど、もう、完璧に身をひそめることができる。社交上の付き合いは最低限にし、地味に立たず過ごすことにしよう。
首都の屋敷に戻るのは十年ぶりだった。
(あいかわらず、ここは賑やかねぇ……)
転移術が使えるのは、ごく一部の魔術師だけだ。
そんなわけで、アイリーシャ達は馬車に大量の荷物を詰め込み、都まで十日ほどの旅をしてようやく戻って来た。
街は、十年前と変わりないように見えていた。いや、十年前より栄えているだろうか。最後にこの場所を見た時は五歳だったから、記憶があやふやだ。
(……そう言えばあの時)