転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 美しく成長したアイリーシャを連れて歩いて自慢して回りたいらしい。

(お母様の希望はかなえてあげたいけど……!)

 そうこうしている間に、馬車は屋敷に到着していた。

(……ここに戻ってくるのも久しぶりよね)

 五歳で、ここを出発してから一度も戻らなかった。五歳の誕生日当日、記憶がよみがえってから、この屋敷で過ごした時間はさほど長くない。
 けれど、帰って来たという思いが一気に押し寄せてくる。

「アイリーシャ、久しぶりだな」
「ルジェクお兄様!」

 アイリーシャが馬車から降りた時には、長兄が出迎えに来ていた。長兄のルジェクは、公爵家の跡取りとして修業中。
 次兄のノルヴェルトは、王立魔術研究所の職員として勤務。三男のヴィクトルは王立騎士団の騎士団員だ。
 ノルヴェルトとヴィクトルは勤務中のため、今はここにはいない。

「一年ぶりだったかな? こんなに大きくなって」
「そんなに大きくなったわけではないわよ、お兄様」

 両手を身体に回され、強く抱きしめられる。ルジェクが待っていてくれたのがわかるから、アイリーシャも強く腕を回し返した。

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