転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「あら、ルジェク。私とも一年ぶりだと思うけれど?」
「お帰りなさいませ、母上」

 アイリーシャを離したルジェクは、母の方に向き直って頭を下げた。

「屋敷を任せきりにして、悪かったわ。あなたも、よくやってくれたと、報告を受けていてよ」
「やるべきことをしたまでです」

 アイリーシャを連れて母が領地で暮らすようになってからも、兄達は首都の屋敷に残っていた。王宮に出入りするようになっていたので、領地に戻るわけにはいかなかったのだ。
 両親がアイリーシャにつききりになっていたため、兄達は放置されていたという面もある。その点については、申し訳ないことをした。

「ルジェクがよくやってくれていたから、安心することができたよ」
「おかえりなさいませ、父上。確認していただきたい資料があるので、あとでお部屋にお持ちします」

 父にも挨拶をしてから、ルジェクがこちらを振り返る。

「そうそう、ノルヴェルトが王立魔術研究所に来るようにって。カミル殿から、話は聞いているんだろう?」
「許可が出たの? よかった!」

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