転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
というかむしろ今の状況に頭が追い付いていなくて、食事なんてできそうにない。けれど、アイリーシャの言い訳を、母は素直に信じたようだった。

「あらあら、では、すぐに朝食にしましょうね。それから、今日は、ガーデンパーティーがあるから、準備をするのよ」
「ガーデンパーティー?」

 首をかしげると、母はアイリーシャをぎゅっと抱きしめた。

「五歳のお誕生日おめでとう」
「……ああ」

 そうか、今日は五歳の誕生日なのか。
 だが、いろいろな記憶が頭の中でごちゃごちゃとしていて、まだ混乱から抜け出すことができないでいる。

「ええ、あなたのお誕生日よ。新しいドレスに、プレゼント。楽しみでしょう?」
「う、うん……」

 五歳らしいふるまいってどんなものだったか。少なくとも、親におかしいと思われるのは困る。

「お返事は、『はい』でしょう?」
「はい、お母様」

 素直に言い直せば、母はにっこりとしてアイリーシャの額にキスを落とす。
 機嫌のよい母は、アイリーシャのクローゼットを開けて、中から真新しいドレスを引っ張り出す。

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