深海特急オクトパス3000
. ─存在証明のパラドックス─
どうなっている?
過呼吸ぎみに辺りを見渡す。
血塗られた車両内。
無機質に彩られた死の檻。
現実感を伴わない状況を俯瞰するだけで、
思考が追い付かない。
場を包む死の気配。
漂う腐敗臭がいやがおうにも現実を実感させる。
ここはどこだ?
状況を把握しようと記憶を探るが、
自分の名前さえ思い出せない。
ただ解るのは、リアルに響いてくる振動音。
淀んで張り付く空気にむせかえる臭気。
五感の全てが、
これがセットや作り物ではなく現実だと、
本物だと告げていた。
死の車両。
そこに自分は存在しているのだと。
僕が目覚めて最初に感じたのは恐怖。
果てしない恐怖の螺旋。
その怨嗟の螺旋特急で僕は目覚めていた。