腹黒幼馴染、天使を捕獲する。
「あ、光!」

「え? なに?」

「あー、ちょっと話があったんだった。
アイロン急ぐでしょう?
休憩室で話すから」

なんだろう?
珍しい。
母が個人的な話を会社でするなんて。

休憩室には誰もいない。
ハンガーにかけたジャケットに、丁寧にスチームをかけていく。

オーダーメイドの上質な生地だから緊張しちゃう。

「ねぇ、今週末、家に帰れない?」

これは思いっきりプライベートな話だな。

「……なに?
なんかあったの?」

「お父さんが寂しがってるわよ。
娘達が帰ってこないから」

「え? だってメグがいるじゃない」

妹の恵(めぐみ)は、私の2つ下。
現在は母校、聖堂館学園小学部の養護教諭をしている。

「メグは鉄平くんに取られたままよ。
もう婚約してるし、いいんだけどね」

「あー、そっか。帰ってないんだ。
ま、仕方がないよ。
藤田家の男子は執着系だからねぇ。
でも、大事にしてくれてるんでしょ?
聞かなくてもわかるけど。
だったら、メグ幸せなんだからいいじゃない」
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