腹黒幼馴染、天使を捕獲する。
「有希ちゃんが?」

「情緒不安定になって、突然泣き出したり、ヒステリックになったり。
自分に原因があることで、かなりのストレスになっていたんだな」

「……櫂人…俺なんて言ったらいいか……」

「いや、結果はわかってるだろ?
だから、ちょっと聞くの辛いかもしれないけど、そこは安心して聞いてくれ」

「……あ、ああ! そうだな」

「で、そういう状況にも関わらず、俺は常に夜型の人間で、昼過ぎから家に居ない。
しばらく店を閉める事も考えたよ。
でも、さすがに収入云々じゃなく、顧客が心配でな。ここでしか安心して呑めない客が多いからな」

「……まあ、そうだな。
お前に癒しを求めて来る客は多い」

「それに……俺自身もな……。
この店は、有希に出逢う前から俺の全てだった。閉めてしまったら、俺の中で何かを失ってしまう気がした……」

「それは当たり前だ。
男にとって、仕事は大事だ。
家族が一番なのは間違いない。
でも仕事があって、はじめてアイデンティティが確立する」
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