腹黒幼馴染、天使を捕獲する。
中学3年生のクリスマスイブだった。

ホテル業という職業柄、クリスマスは忙しい父親を除き、俺は母親と祖父母と共に参加していた。

この年は大学に入ってから、なかなか家に帰らなかった兄の理人が珍しく参加していた。ちゃっかり恋人の凛子さんを連れて。

そこで俺は見てしまったのだ。
光の表情の変化を。

久しぶりに会った兄貴と嬉しそうに話していた光。
でも、斜め後ろに凛子さんを見つけた瞬間……。一瞬固まって、哀しそうな表情をした後、すぐ笑顔に戻り挨拶を終え、大聖堂の外に向かって歩き出した。

その表情と行動がどうしても気になった俺は、彼女の後を追った。

外も信者で溢れていたが、白いコートの光はすぐに見つかった。

思いっきり空を見上げて、一見、星を見つけようとしているかに見える。
でも、その目元は少し濡れていた。
必死に涙を堪えているのがわかった。

あぁ、そうだったのか……。

俺は気付いた。

光は、兄貴に恋をしていたのだ。
おそらく、小さい頃からの憧れのようなものだろう。
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