私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
この数式は尊にしごかれたから簡単だ。
チョークを掴んでスラスラ問題を解くと、先生が目を細めて私を見た。
「おお。正解だ。水瀬にはご褒美にこのイチゴキャンディーをやろう」
先生が上着のポケットからピンクの包み紙に包まれたキャンディーを私に差し出す。
それは女の子の間で人気のキャンディーで、入手も難しい。
一度式神に買いに行ってもらおうとも考えたのだけど、父も兄も私に式神を貸してくれなかった。
「ありがとうございます」
わー、嬉しい。
食べ物に目がない私はニコッと微笑んだ。
先生、なかなか生徒のことわかってますね。
優しくていい先生じゃないの。
教室にいる他の女の子たちも私と同じような印象を持ったようで休み時間になると先生に群がった。
そんな光景を楽しげに眺めながら、先生にもらったキャンディーを口の中に放り込む。
あー、このほどよい甘さがいいのよね。
至福のひとときだわ。
ひとり幸せに浸りながら舐めていると、春乃が私の席までやってきた。
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