私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「渡辺先生モテモテだね」
彼女の言葉に笑って頷く。
「まあハンサムだもん。校長先生は五十八歳だし、今までうちの学校に若い男の先生いなかったしね」
「そんなハンサムな先生を見ても撫子が興味持たないのはやっぱり尊さんがいるからかなあ」
彼女がからかってきて、ギクッとする。
「ちょ……そういうんじゃないから」
慌てて否定したが、春乃はさらに続けた。
「その反応が怪しい。最近尊さんと何かあった?なんか撫子、尊さんを見ると挙動不審よ」
「べ、別に普通だよ」
別荘でのことは春乃にも言っていない。
露天風呂で胸を触られてキスされたなんて知ったら、お嬢さまの彼女は驚いて失神するかも。
動揺しながら言い返したその時、近くの窓ガラスがガシャンと割れて、カラスが教室に飛び込んで来た。
咄嗟に春乃に覆い被さると、身体中にいくつも細かいガラスの破片が突き刺さる。
……痛い。
顔をしかめて痛みを堪えながら春乃に目を向けると、彼女は無事だった。
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