私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「いらっしゃいませ」
お婆さんを見て隼人が飛び上がる。
「わあっ!」
やけにタイミングがいいな。
隼人じゃないが、少し驚く俺。
だが、表情に出さずに話を進める。
「夜分にすまない。一晩泊まりたいんだが」
俺がお婆さんに話しかけているのに、隼人が俺に顔を近づけて声を潜めた。
「ちょっと………ここはやめない?」
「食事も頼めるだろうか?」
隼人を無視して話を進めるとお婆さんは「はい」と小さく笑って俺たちを奥にある部屋に案内した。
六畳ぐらいの古い和室。
座卓と座布団しか置いていない質素な部屋。
他にも部屋はふた部屋あった。
灯りは蝋燭の炎だけで薄暗い。
「なあなあ、本当にここに泊まるの?薄気味悪いんだけど。絶対、こういうところ幽霊が出るぞ。いや、あのお婆さんが幽霊じゃない?」
ビクビク怯える隼人を見てフッと笑った。
「妖倒す奴が何を言ってんだか」
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