私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「だって、妖と幽霊は全然違うじゃんか。幽霊はなんか実体がなくて、足もなくて……。それですすり泣きとかしちゃってさあ。どう戦っていいかわからない。もうとにかく滅茶苦茶怖いんだよ」
幽霊の怖さを力説する隼人に呆れ顔で返した。
「お前は一度でも幽霊を見たことがあるのか?」
「な、ないけどさあ」
隼人が震える声で答えたその時、部屋の戸がスッと空いて、彼が俺に抱きついた。
「わあ、出た〜!」
「お食事をお持ちしました」
お婆さんが夕食を持って来て座卓に並べると、すぐに出て行く。
「お前、いつまで俺に抱きついているつもりだ。男といちゃつく趣味はないんだが」
俺に抱きついている隼人に冷たく言えば、彼はパッと離れた。
「あっ、ごめん、ごめん」
「お前、びびり過ぎ」
ポリポリ頭をかきながら謝る彼に注意して出された夕食を食べ始める。
ご飯とキャベツの味噌汁に、山菜の和え物、それとこんにゃくの味噌田楽。
「……肉と魚がない」
隼人は質素な料理を見てガクッと項垂れる。
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