私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
あれは……夢?
そのことに安堵すると、彼は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「また悪い夢でも見ましたか?」
「……うん。不気味な声がして闇の中を必死で逃げ回っているの。尊も琥珀くんも誰もいなくて……怖かった」
ギュッと布団を掴む私を見て、尊が優しい目で言う。
「ただの夢です。私はここにいるでしょう?だから安心して眠ってください」
「でも……もう眠れないよ。夢を見るのが怖い」
さっきの夢を思い出すだけで鳥肌が立つ。
尊に震えながら伝えると、彼はそんな私をじっと見つめた。
「仕方がない人ですね」
呆れるような言い方ではなく、とても甘い声でそう言って尊は着ていた上着を脱ぎ捨て、私のベッドに入ってきた。
彼の思いがけない行動に慌てる私。
「え?ちょっ……尊何してるの?」
起き上がろうとする私の肩に彼が手をかけて止めた。
「あなたが眠れないから私が一緒に寝るんです。昔はよく一緒に寝たでしょう?」
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