私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「匂いはしないが、私にはわかる。お前の血は美味しそうだ」
赤鬼が身を屈めて私の首に顔を近づける。
その時、前に鬼に血を吸われた感覚が甦って恐怖におののいた。
「嫌〜!」
声を限りに叫んだその刹那、尊から預かったネックレスの石が大きく光って赤鬼がその眩しさに顔をしかめた。
「……結界だけではなく、こんなものまで用意しているとは。せっかくイチゴキャンディーで結界の効果をなくしたのに」
光る石を忌々しげに赤鬼は睨みつける。
どうやら鬼にとっては嫌な代物らしい。
赤鬼が私を襲って来ない。
そのことに安堵した。
それにしても先生にもらったイチゴキャンディーが尊が張った結界の効果をなくしていたなんて……。
人から物をもらったら気をつけないと……。
「……この娘を連れてひとまず私の居城に戻るか」
赤鬼が私を見据えて呟く。
途切れ途切れになる意識の中で自分の死を覚悟した。
私はそのうちこの鬼に血を吸われて死ぬだろう。
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