私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「つまり、ここに妖とお嬢ちゃんがいるってことか」
隼人も急に真剣な顔でそう呟いて呪文を唱えた。
だが周りの教室のガラス窓が割れるだけで、結界は解けない。
「くそっ、ダメだ。俺じゃどうにも出来ない」
彼は悔しそうに悪態をつく。
そんな彼を見るのは初めてだった。
紅羅の結界は難なく解けたが、これはそうはいかない。
恐らく一角の鬼が張ったもの。
「この結界……すごい熱い」
琥珀が結界に触れ、顔をしかめた。
紅羅の結界とは桁違いの強度。
この中に撫子と妖がいるのに入れないとは……。
グズグズしてはいられない。
撫子を助けないと。
ハーッと息を大きく吸い込むと、結界に手をかざし呪文を唱えた。
解けろ!解けろ!
冷気が立ち込めきて結界が少しずつ凍ると、琥珀が目を見張った。
「尊……何を?」
一方、隼人はブルブル震えている。
「尊、なんでもいいけど早くやって。俺凍っちゃう」
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