私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「お前……私が怖くないのか?」
単に怒りが恐怖に勝っただけだ。
「怖いわよ。でも、どうせあなたに殺されるんだもの。命乞いなんてしないわ」
怒りをパワーにして煌を見据えれば、彼はニヤリとした。
「人間のくせにたいした娘だ。紅玉は出来損ないで、次頭の器ではない。私の血とお前の血を掛け合わせたら、最高の鬼が生まれるだろうな」
その話に身体がゾクッとする。
胸元の石に目をやれば、煌の禍々しい空気を感じて闇色に光っていた。
彼もチラリと石を見て思い出したように呟いた。
「その石……私を封印した奴が同じものを持っていたな。天月帝といったか。いずれその石を壊してお前を血を頂く」
煌はフッと笑うと、この場からパッと消えた。
え?ちょっと待って。
天月帝がこの石を持っていた?
それって尊が天月帝ってこと?
いや……違う。天月家の当主が鬼を封印したのは十年以上昔の話。
彼は今二十四歳だし、天月帝ということはない。
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