私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「撫子……喋るな。あいつを片付けたら治してやるから」
その目は涙で潤んでいる。
剣が刺さったんだもの。
尊もビックリするよね。
いつもいつも心配ばかりかけちゃって……ごめん。
でも、いくら尊だってこんな怪我を治癒するのは無理だろう。
尊だって満身創痍で戦っている。
「絶対に倒すから、待ってろ」
尊が私の頬に手を添えて約束する。
でも、私はもう持たないかもしれない。
返事をする代わりに彼を見て微笑み、唇の動きだけで彼への思いを伝えた。
好き。
彼は私の唇の動きを読んでうっすら涙を浮かべる。
「いい子で待ってろ」
尊はもう一度そう言って私の唇にそっと口付けた。
もうその唇の感触も感じない。
そのキスの意味を考える気力もない。
ただ、彼と触れ合うのは最後かもしれない。
そんなことをふと思った。
尊は私から離れ、煌を見据える。
「お前を許さない」
彼の目が金色に光って……。
何かが爆発したかのように尊の身体が燃え上がり、周囲の空気も熱くなって、玉座も溶けてドロドロになる。
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