私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
全てを燃えつくしそうなほど勢いの強い炎。
火の使い手の煌でさえも、怒りに燃える尊を見て顔を引きつらせた。
「人間なのになぜこんな力を……」
「煩い。俺の大事な者を傷つけた報いは受けてもらう」
炎に包まれているのに、彼の目は冷たい氷のようだ。
「出来るものならやってみろ!」
煌が鼻で笑って無数の火の矢を尊に向けて放つが、尊はそれを全部跳ね返した。
「……馬鹿な」
煌は信じられないって顔をして、さらに炎の力を溜めて雷のような光を放った。
眩い光に一瞬目を閉じる。
普通これだけの熱量なら、たとえ上級の妖でも一瞬にして消滅してしまうだろう。
目を開けて尊の姿を確認すると、彼は負傷していなかった。
変わらず炎が尊を守るかのように包んでいる。
「終わりか?」
尊が冷淡に問うと、煌はここにきて初めて狼狽えた。
「……なぜ死なない?」
「質問の答えになってない。もういい。お前は消えろ」
< 217 / 241 >

この作品をシェア

pagetop