私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
恐らくその和紙に兄の念が込められているのだろう。
「あー、それいいなあ。私もほしいんだけど、お父さまも秋兄さまもくれないのよね」
羨ましそうにその和紙を見る私を見て彼女はいささか呆れ顔で返した。
「撫子はくだらないことに使うからよ。式神に限定五十個の和菓子を買いに行かせたりしてて、尊さんに怒られたじゃない」
あの時は『式神は便利屋ではありませんよ』と一時間ほどネチネチと説教された。
でも、治癒の術を使うと尊はもっと怒る。
過去に庭で死にかけていた雀を治したら、『もう絶対に使うな!』と雷が落ちた。
彼が敬語を使わないのはよほど怒っているということで、空気も静電気が起きてバチバチいっていた。
あの時は熱が出て一日寝込んだんだよね。
さっきの猫を助けたのを見たら、今度は空気が爆発しそうなくらい尊は激怒するだろう。
「尊は私に厳しすぎるのよ」
ハーッと溜め息交じりに言う私に彼女はニコッと微笑んだ。
「大事にされてる証拠だよ」
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