私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
もどかしい思いで彼女から離れて煌を睨みつける。
「お前を許さない」
怒りが身体の底から湧き上がる。
今まで抑制していた感情が一気に爆発した。
俺が小さい時、父が唯一教えてくれたのは、『いつでも静の心でいろ』という言葉。
まだ俺は幼くて妖を倒す術は一切教えてくれなかった。
だが、どんな技を習得するよりもそれは難しい。
十年以上水瀬家の当主と心の鍛錬を積んできたが、まだまだだ。
怒りが俺の身体を支配する。
俺の大事なものを傷つけたこいつが憎い。
憎くて仕方がない。
術を唱えていないのに俺の身体は炎で燃え上がる。
それは俺の怒りと憎しみ。
負の感情を剥き出しにする俺を見て、煌が大きく目を見開いた。
「人間なのになぜこんな力を……」
人間がなんだ。妖がなんだ。
そんな意味のないことを聞くな。
「煩い。俺の大事な者を傷つけた報いは受けてもらう」
煌を見据え、一言一句ゆっくりと告げる。
「出来るものならやってみろ!」
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