私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
2、俺にとって特別なもの ー 尊side
最近、よく夢を見る。
頭に角がひとつある赤鬼が撫子を俺から奪うという夢。
何かの予兆なのだろうか。
銀食器を磨いていたら、頭の中でバキッと嫌な音がした。
「撫子の結界が破られた」
彼女には言っていないが、万が一のことを考えて結界を張っている。
その結界を破るとなると、かなり上級の妖が現れたらしい。
銀食器を棚に置いて、瞬時に学校に空間移動するが、もう生徒はいない。
近くにいた先生に話を聞くと、今日は午前で授業が終わったと言われた。
「どこへ行った?」
そう呟いて、静かに目を閉じた。
桜のお香の匂いが微かに残っている。
このお香は彼女の血の匂いを消すためのもの。
妖は宗家の血族の血を好むが、彼女は自分を守る術を持たない。
だから、妖から彼女の存在を隠すために着物に桜のお香を焚き染めて、血の匂いを誤魔化していた。
この桜のお香は俺が特別に調合したものだ。
その匂いを辿って彼女を探すと、甘味処に辿り着いた。
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