私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
だが、様子がおかしい。
店の周囲に赤い結界が張られ、まだ日中なのにこの一帯だけが真っ暗で人もいない。
頬に傷がある猫がその店に向かって突進するが、結界に跳ね返された。
あれは妖。だが、邪悪な気配はしない。
いつも俺がつけているネックレスの石に変化が見られないのがその証拠。
これは父が亡くなる前に俺にくれたもので、普段は虹色に光るのだが、邪悪な妖がそばにいれば黒い光を放つ。
起き上がって十倍の大きさに変身した猫がまた突進しようとしているのを見て止めた。
「無駄だ。怪我をするだけだぞ」
今度は猫は少年の姿に変身し、俺に訴えるように言った。
「でも……姉ちゃんが赤鬼に殺されちゃう」
妖の言葉にスッと目を細め、問い返した。
「姉ちゃん?」
「おいらの怪我を治してくれたんだ。おいら腹ペコでヨタヨタ歩いていたら車に轢かれちゃってさあ」
怪我を治したと聞いてピンときた。
撫子のことか。
「俺が助けるから」
俺がそう言っても彼は信じない。
店の周囲に赤い結界が張られ、まだ日中なのにこの一帯だけが真っ暗で人もいない。
頬に傷がある猫がその店に向かって突進するが、結界に跳ね返された。
あれは妖。だが、邪悪な気配はしない。
いつも俺がつけているネックレスの石に変化が見られないのがその証拠。
これは父が亡くなる前に俺にくれたもので、普段は虹色に光るのだが、邪悪な妖がそばにいれば黒い光を放つ。
起き上がって十倍の大きさに変身した猫がまた突進しようとしているのを見て止めた。
「無駄だ。怪我をするだけだぞ」
今度は猫は少年の姿に変身し、俺に訴えるように言った。
「でも……姉ちゃんが赤鬼に殺されちゃう」
妖の言葉にスッと目を細め、問い返した。
「姉ちゃん?」
「おいらの怪我を治してくれたんだ。おいら腹ペコでヨタヨタ歩いていたら車に轢かれちゃってさあ」
怪我を治したと聞いてピンときた。
撫子のことか。
「俺が助けるから」
俺がそう言っても彼は信じない。