私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「でも……紅羅は……すごく強いんだ。おいらも昔あいつに殺されそうになって怪我をした」
自分の頬の傷を指差す彼の頭にポンと手を置いた。
「それでも、必ず俺が助ける」
両手を高くあげ、店に張り巡らされている結界を破壊する。
割れたガラスのようにガシャンと音を立てて結界が壊れるのを見て、少年は目を丸くした。
「兄ちゃん……何者なの?」
「ただの人間だ」
フッと笑って店の中に入ると、撫子が少年に血を啜られていて気を失っている。
その少年の腕には金の腕輪が輝いていて頭に角が二本あった。
撫子!
咄嗟に叫びそうになるも堪えた。
赤鬼はまだ俺に気づいていない。まずは状況を確認しなければ……。
近くには秋の婚約者の春乃や店員、他の客もいるが動きが止まっている。
俺のネックレスの石は、どす黒い光を放っていた。
懐中時計を出して確認すると時計の針が止まっている。
この妖怪、時を操れるのか。
また厄介なのが現れたな。
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