私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「そうらしいね。よっぽど油断していたんだろうね。でも、僕はそんなヘマしない」
「だったら、今再生した目は誰にやられた?」
俺が問うと、彼は顔をしかめた。
多分、風磨家の者にやられたのだろう。
「さあね。忘れたよ」
紅羅はそう言って撫子から離れ、俺と対峙した。
すると、彼の右腕が刃に変化し、「死ね!」と叫びながら襲いかかってきた。
咄嗟に近くにあった椅子で防御するが、椅子は一瞬で粉々になり、腕に痺れが走る。
正直、鬼のような最上級の妖と戦うのは初めてだったが、焦りはしなかった。
俺が負ければ撫子は死ぬ。
床に倒れている彼女にチラリと目を向けた。
絶対に撫子を死なせはしない。
命にかけても守ると十二年前に誓ったのだ。
俺が怒りで全てを破壊しようとした時、彼女は身を挺して助けてくれた。
火に包まれた俺を見ても彼女は怖がらず、真っ直ぐな瞳で俺にやめるよう訴えて……。
水瀬家の人間だが、彼女は水を操る術を使えない。
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