私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
使えるのは治癒の術と甦りの術だけだが、俺が知ってる中で誰よりも勇敢な女の子だ。
もし、撫子がいなかったら、俺は死んでいただろうし、この世界もどうなっていたかわからない。
だが、その代償として彼女は死にかけ、一年もの間眠ったままだった。
少女にとっての一年は長く、とても大切な時間だ。
命はなんとか助かったが、俺は彼女の貴重な時間を奪ってしまった。
それからは、自分の力は撫子のために使うと決めたし、彼女を一生守ることにした。
撫子の父親に俺を彼女のそばに置いてくれるよう頼んで……。
「人間ってさあ、ホント非力だよね。知能は下級の妖より上だけど、貧弱でちょっと遊んだだけですぐ死んじゃう」
紅羅の刃が炎に包まれ、俺にその刃を振り上げる。
「馬鹿な鬼だ」
ポツリと呟き、近くの机に置いてあったコップを空中に投げた。
すると、零れた水が剣に姿を変え、それを掴んで相手の刃を受け止めた。
ジュッと音がして水の剣と相手の刃の炎が一瞬にして消える。
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