私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
相手が本気ではないのか、手応えは感じない。
「へえ、お兄さんは水の術が使えるんだね。ひょっとして水瀬家ってとこの人?でも、そんなんで勝てるの?」
フフッと笑う彼は余裕の表情。
だが、俺もまだ本気ではない。
「炎は消えただろう?」
相手を挑発するようにニヤリとする。
「一回消えたってまた燃やせる。次はお兄さんごと燃やそうかな」
くるくる変わるその表情は遊びに興じている子供そのもの。
悪戯っぽく笑って、紅羅は俺に向かって火の球を投げた。
ボッと炎が俺を包み込む。
結界を張っているからすぐには燃えないが、服が溶けそうなほど熱い。
「うっ!」
思わず呻いて跪いた。
息苦しくて胸を押さえる。
「わあ、凄い。僕の炎で燃えなかったのはお兄さんだけだよ」
パチパチと楽しげに手を叩く彼に言い返すが、呼吸が苦しくてうまく言葉にならない。
「こ、この程度の炎で……死ぬか」
結界も解け始め、服がジリッと焼ける音がした。
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