私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
俺の説明に妖は安心した顔で相槌を打った。
「そうなんだ。よかったあ。それにしても兄ちゃん、赤鬼を倒すなんて凄くつえーな。こんなつえー人間初めて見た。本当に人間?」
目をキラキラさせて俺に尊敬の眼差しを向ける彼にゆっくりと頷いた。
「一応ね」
「ふーん。妖だって鬼を倒すのは難しいのに、兄ちゃん結構余裕あったよね」
「余裕……か」
自分にどれほどの力があるのかわからない。
撫子に助けられた十二年前のあの日、俺は覚醒した。
ずっと監禁されていて怒りが爆発。
それで身体中から力が溢れて、止まらなくて……。
それ以後、全開で力は使っていない。
今まで現れたのは下級の妖で、さほど力は必要ではなかった。
今日、鬼が現れてかなり力を使ったが、自分でちゃんと制御できていた。
大丈夫だ。
俺が気をしっかり持っていれば。
力を全開してしまえば、多分あの時の二の舞になる。
この赤鬼よりも強い鬼が現れたら俺はどうなるのだろう。
鬼よりも、自分が怖い。
< 38 / 241 >

この作品をシェア

pagetop