私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
俺たちのやり取りにその妖はおろおろする。
「どうせ行くとこもないんだろう?」
優しく問えば、彼は少し元気がない様子で答えた。
「……うん。まあ」
「決まりだ。お前、名前はあるのか?」
人間に化けることが出来るなら、彼にも名前があるはず。
「琥珀」
彼が俺の目を見て答えた時、撫子の友人の春乃さんや店にいた客や店員が動き出した。
赤鬼が消滅して時の流れが戻ったのだろう。
「え?撫子どうしたの?」
春乃さんが撫子を見て慌てた。
「妖が現れてちょっと怪我をしただけです。心配には及びません。明日もちゃんと登校させますから」
安心させるように微笑めば、彼女はホッと胸を撫で下ろした。
「よかった。あの……妖は?」
「是清さまと秋さまが倒しましたのでご安心ください」
俺の言葉に是清さんと秋さんは苦笑いし、琥珀は怪訝な顔をする。
「では、私はこれで失礼します。琥珀、お前も来い」
春乃さんにそう告げると、撫子を抱き上げ、猫の妖に目を向けた。
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